
解答のないミステリー
1巻と同じく、内容・付録ともにボリュームたっぷりの岩波版日本書紀第2巻です。
訳文なしですが、漢字はほぼ総ルビですし、岩波文庫としては活字も大きめで、それほど読みにくさはない…と思っています。
この巻は、ヤマトタケル、神功皇后、応神天皇、仁徳天皇など、わりとメジャーどころが多く出てきます。
ところで、古事記・日本書紀の内容には藤原氏政権の思惑がかなり反映されている、というのは、この本を読もうという方なら常識だと思いますが…。通読していて「実際の歴史はどうだったのかな?」と素人なりに考えをめぐらせてしまいます。
ヤマトタケルの出てくる景行天皇の巻第七、古事記なら下巻の冒頭にあたる仁徳天皇の巻第十一などはいろいろな要素がギュウギュウ詰め、という感じで読んでいて大変でしたが面白かったです。
自分でウケたのはちょっとマイナーですが允恭天皇(巻第十三)の冒頭。つなぎにムリがありすぎる…!どこか飛ばして読んじゃったのかと思いました。
編者たちが何を思い、何を目指して現在の日本書紀の形に歴史を造りあげたのか。
この形にされる前の本当の歴史はどんなだったのか。
答えはありません。でも自分なりの日本史を組み上げるために、この本はいろいろなものを提供してくれると思います。

『日本書紀』の中でも、特に好きな部分です。
第2巻には、第11代垂仁天皇から第20代安康天皇を収録しています。『日本書紀』の歴史観は、この巻で一つの画期を迎えます。つまり国内統一事業をほぼ終えて、いよいよ海外に進出し始める過渡期として描かれているのです。そのため、ヤマトタケルや神功皇后といった、皇位継承はしないけど、英雄的な活躍をする人物が登場するわけです。しかし、史実性を帯びてくる一方で、『日本書紀』の記述と実際の年代が一致しないという《紀年問題》も深刻に…。たとえば神功皇后の場合、皇后が摂政になってから死ぬまでは69年ですが、この69年間に起きたと述べられている海外の出来事を実際の年代に照らし合わせると、神功皇后は189年間摂政の地位にいたことに…。なぜこんなことになってしまったかというと、神功皇后を邪馬台国の女王卑弥呼に模したためらしいですが。ところで個人的には垂仁天皇が興味深かったです。皇后が謀反に手を貸すという悲劇が語られたり、伊勢神宮が創始されたり、古墳文化が始まったと述べられたり、民俗学などからも注目されている人物です。史実と伝説、あるいは史実と虚構の境界を散歩できる、面白い1冊です。

岩波文庫の原文版『日本書紀』
『日本書紀』『古事記』のいわゆる「記紀」の解説書から、邪馬台国の存在や大和朝廷の成立など古代日本史を扱った本は数多にあるが、とにかく基礎資料たる『日本書紀』の原文を、全部読み通さなくても、せめて参照できるように手元において置かなければ正確な知識の習得はおぼつかない。岩波文庫のものは原文のままで、非常に詳細な注釈がついているのでとても参考になるだろう。反面、原文なので読むのが難しいから講談社学術文庫の宇治谷孟氏、あるいは中公クラシックスの井上光貞氏の現代語訳もそろえておけば万全だと思う。日本古代史に関心がある人で、専門家や歴史愛好家の書いたものを読むだけで満足しているような人がいるが、まさに自分たちの歴史を学ぶのであるから、きちんと『古事記』『日本書紀』の原典に当たるように心がけてこそ、正確な歴史認識を期すことができる。字が小さいのが気になる方はワイド版の方もお勧めである。