
追憶すべき記録
日本各地(北海道を除く)の手仕事の案内書である。
また、日本の過去の「追憶すべき記録」でもある。
著者は、日常の道具の美しさを発見し、それを「民藝」と名付けた。
「日本の手仕事」ではなく「手仕事の日本」である。
戦時中に書かれたものであるが、青少年を読者対象としているのでたいへん読みやすい。
ページを繰ると、芹沢ケイスケの美しい小間絵(カット)が目に入り、嬉しい文庫本である。
平明な言葉で、「どの地方にどんな物があるか」ということが日本の自然と共に綴られている。
美しい手仕事を通したディスカバー・ジャパンともいえる。
巻末の地図と詳しい索引も重宝である。
著者は、実用こそが「美しさの手堅い原因」であるとして、「健康な美しさ」を賞揚する。

良い本だとは思うけど
今から約60年前の太平洋戦争中に書かれた本です。著者が20年に渡って、日本中を旅して記録した素朴で美しい道具の数々が紹介されています。恐らく、本書に記されている道具の総数は1000個近くになるでしょう。
乱暴に言うと、本書は、これらの道具を、ただただ紹介し続けるだけの本です。でも、読んでいて、不思議と飽きないのです。それは恐らく一つ一つの道具につけられた紹介文に鍵があるような気がしました。何というか、ひらがなが多めの、易しく、短い文章だけれども、的確で、かつ前後の文とのつながりが絶妙なんです。驚くべき文章力だと思いました。
もう少し、ちゃんと読み込んで、この本の文章の秘密を解き明かしてみたいと思っています。

日本人に生まれて良かったと思わされる素晴らしい本。
とても淡々と日本国中のいい手仕事のものを紹介し、叱咤し、誉めるという内容の本だ。
書かれたのが戦中なんだが、この頃からダメ出しされてたものたちは、今ではほとんど死滅してしまっているものや伝統工芸ももちろんあるだろう。
その淡々とした語り口と対照的に、なんと筆者の熱さとこの本およびその調査の素晴らしさ、意義が強烈に語りかけてくることか。
「美しさ」と「いい仕事」と「重さ」と「丁寧さ」と「品」について、これでもかと語り続ける本。
読み終わると、日本人に生まれて良かったと思わされる。こういった読後感の本て、貴重だと思います。日本人なら必読・必携。

各地の民芸品探しの目次として。
着物に興味を持ち、織や染めの地を訪ねると随所で柳氏が登場します。戦後の民芸復興を推し進め、絶滅しかかっていた織や染めを復活させる働きかけをした人として。その柳氏が子供むけに書いた日本の民芸を紹介する本です。北海道を除く各地の特色ある品(陶芸、染織、籠・食器・農作業具などの日用品)を紹介しています。それぞれについては名前と特徴をざっくり説明する程度。挿絵も全てについているわけではなく、知らないものについては想像のしようもないのが残念です。しかし、世田谷の日本民藝館にはこの本で紹介されている品のほとんどが納められているそう、近々見に行こうと思います。この本は戦前に書かれ、戦後に出版されたとか。同時期に準備していた「民藝図録現代篇」という大人向けの民藝紹介の本の原稿は、戦災で焼失したそう。こちらは図録が豊富だったそうです。惜しい。