
まさしく名著です。
ただ単に「BC級戦犯裁判」にとどまらず、「大日本帝国」という「国家システム」にまでメスを入れた名著です。しかもここが重要なのですが判り易くて読みやすい。名著でしょう。

多くの虐殺があった
戦犯としては、A級戦犯が最も重大な罪に問われているので、戦争犯罪・戦争裁判に関わる関心もまずはA級戦犯に向くのだが、そこで問われる「平和に対する罪」が実は私にはうまく飲み込めない。特に事後的に作られた法によって裁かれる点が特にわかりにくい。それに引き換え、B級戦犯は「通例の戦争犯罪」つまり、捕虜を虐待したり無抵抗の非戦闘員を殺した罪などだから、何が裁かれているのかはっきりしていて、事実認定も比較的容易だ。罪を犯した側が、それを悪いことだと意識していたかどうか(戦時においてはやむをえないと考えていたかもしれない)はまた別だが。BC級戦犯裁判を通じて、そうした虐殺や虐待の事実が認定され、それを通じてまた大東亜戦争(本書の主題が日本帝国軍人の裁判だからこう呼ぶが)でどんな残虐行為が行われたかにも想像がつく。そうしたことから、本書が示すBC級戦犯裁判の総括が示す資料は貴重だ。また多くの認定されていない(できない)事実が存在することをもふまえて、当時何が行われていて何が現在につながっているのかを認識することは、必要なことだと思う。

戦争全般の知識・意識が深まる
BC級戦犯裁判という題名のとおり主な内容はA・B・C級といわれるようになった経緯、裁判と特徴、裁かれた階級等が書かれている。前半はそういった事実が淡々と書かれている印象を受けるが、5章以降は被害者からの証言や犯罪の種類を細かく分類して書かれている。日本に対して行われた裁判は勝者が敗者に対して一方的に押し付けた裁判だという声もあるが、上官の命令に背けず行った位の低い者は比較的軽い刑を受けている事からもわかるように全ての事例について極刑が言い渡されているわけではない。むしろ拷問や処刑を直接行った憲兵が多く裁かれていることがわかる。また、処刑や拷問を指示した位の高いものが裁判にかけられていないことなど調査を重ねた上で一連裁判の問題点を指摘していて説得力がある。位の低い者が上官の命令に背けず罪を犯したといって刑を軽くするよう申し出ていることも「被害を受けた側からすれば単なる言い訳にしか聞こえない」いうことも筆者が被害者から聞いた生の声(訴え)を反映したものである。最終章ではBC級戦犯や第二次世界大戦のことに限らず、現在の世界の流れをみてこれから考えていかなければならない問題点を指摘している。米国のイラク攻撃、そこでの米兵の罪は国際刑事裁判所で問われなければならないにもかかわらず無視していること等の問題点を挙げている。ただ戦争反対を訴えるだけではなく、今までの経緯等を議論して皆で考える必要を訴えている。憲法改正や自衛隊を軍隊にするように唱えている人々は戦前・戦中に日本軍が行った虐殺や強制労働などの行為をきちんと認識した上でそういった考えを披露してほしい。それを知っていても憲法改正や軍隊を持つことを唱えるような人は認識が足りない。「自分が被害者側に立ったら」と考えればわかるはずだ。戦争がいかにいけないことかが。