
率直に『福祉大国』の実情を語る本。
女性学によくありがちな「北欧の国を理想郷のごとく語る」という過ちは犯してはいない本です。
率直にデンマーク王国という、キリスト教を国教とする『福祉大国』の実情を描いています。
男性の税込み収入が300万円程度。
女性の税込み収入が200万円程度。
ここから福祉を支えるために、所得税が50%以上引かれてしまう。
さらに消費税は25%もの高率。
これでは、女性は「働き続けなくてはならない」国になるわけです。
一部の富裕層を除いては。
惜しむらくは、この国を支える「徴兵制」について語られていないこと。
男性のみに課せられた徴兵義務ではありますが、
この制度があることによって、愛国心が国民に叩き込まれ、
「生活満足度」の調査にも影響を与えているだろうことは記述していただきたかったです。
しかし、第11章において、デンマーク王国では犯罪発生率が日本の13倍も高い、と記述しているように、
この「率直さ」によって女性学の類書よりも好感を持ちました。

教育、福祉、男女雇用の問題に取り組む国
デンマークは福祉国家として有名である。が、福祉国家の代償として生活満足度は低いのか?否、1991年の国民生活ランキングではデンマークは第1位。日本は14位。少子化については合計特殊出生率で1984年の1.37を底として以降上昇に転じている。その上昇のための政策努力と多くの改善の積み重ね、国民の高い政治意識がこの本はわかりやすく説明してくれる。また多くの統計学的グラフや年時系列により客観的な裏付けがなされている。未婚女性、既婚家庭などの環境を問わず子どもの生活、教育を保証する制度。男女の共働きと育児の共存を補助する制度。多くの教育、住宅、老後の年金、保健を支える政策は現在の日本とは大きく異なるが、異なるがゆえに少子化を乗り越えた国に学ぶべき事は大きい。

現地調査が語る、出生率が向上している国。
日本の出生率の低下は止まる所を知らず1.32になった。それに引き換え、デンマークは1983年の1.37を底としてその後上昇を続け1995年には1.82にまで達している。本書はデンマークを2回にわたり訪問し、現地調査をして出生率向上の秘訣を詳細にまとめたものである。結論は、要するに女子の就労意欲に対応した社会になっているということだ。デンマークでは午後4時に仕事が終わるとさっさと帰る。夫が家事を手伝う事が多い。それも夫と妻が1日おきに食事を作ったり後片付けは夫婦共同でするなど本格的である。教育費が無料に近い事も子供を作りやすい要因となっている。全くうらやましい国だと思った。世界第2位の経済大国である日本が出来ないわけは無いのだが。

デンマークに住んでみたくなる
少子化は世界でも先進国共通の課題である。それでも女性が一生の間に子どもを産む数とされている合計特殊出産率が1984年以降、着実に右肩上がりの状況が続いている国がデンマークだという。これは国家政策だけでなく、もっと狭い地域における子育ての問題にも参考になるのではないか──そんな期待を胸に読んでみた。大学教授など研究者6人の共著のため、子育てに関するデンマークの社会環境や教育制度、福祉政策など、各章のテーマごとにその深みが違うのが気になるところ。しかし、しっかりと現地インタビューを交えながらデータで立証し、どの点が少子化対策に有効だったのか、デンマークの家庭ではどのように子どもを考えているのかを具体的に解説してくれる。なかでも『子どもはデンマークの未来であり、養育に関して第一の責任は家庭にある。その家族を援助するのが社会の役割だ』という精神は、そのデンマークという部分さえ私たちが暮らしている街に置き換えてみれば、すぐにでも採用できるものである。デンマークは明確な対応策を持って少子化の危機に立ち向かっていったわけでなく、まさに試行錯誤の繰り返しと、もともとデンマークが持つ伝統や文化のもとに現在がある。それをわが国がそっくりそのまま真似できるはずがないのは当然だ。とはいえ、国家レベルではなく、街という小さな共同体であれば、底辺に流れる子どもへの考え方、そして一つひとつの施策を参考にして実践することは可能なはずだ。実際にデンマークへ行ってさらに少子化対策を追求してみたくなる。そのぐらい実用的かつ参考になった。

ただ子どもを増やそうというのではない!
少子化は、単に児童手当や育児休暇を増やすだけではなく、幼児から若者、家族そして高齢者に至るまで、多様な制度でもって彼らの生活を支援することで克服できるということを、各章で説明してくれている。一見「少子化」というテーマとは関係なさそうだが、結局、人が生きやすい社会を作っていくことが全てに通じるんだなぁと読んで実感した。「生活大国」と呼ばれるデンマークの人々の日常と社会のしくみが、具体例とともに紹介され、説得力もある。多様な角度から「少子化」について考えたい人々には必読の一冊。