
世界最高峰のフルコース
新潮クレストブックスが十年間に刊行した短編集のなかから、堀江敏幸が選んだ十篇が収められている。
もともと、短編に豊かな実りの多いクレストブックスの中から、短編の名手が十篇を選びぬくというのだから、面白くないはずがない。
デザート盛り合わせ、いやいや、塩味も辛味も、苦味もあるからデギュスタシオンのような、ぜいたくなひと皿。
アリステア・マクラウドも、ジュンパ・ラヒリも、アンソニー・ドーアも、イーユン・リーも、みんな一冊の中に収まっているなんて夢のようだ。
世界の名人たちの作品には、それぞれ長編なみの深みと味わいがあり、ひとつ読み終えるごとに深い満足を得られる。
堀江氏の解説「人はなにかを失わずになにかを得ることはできない」の最後の一行を読み終えたところで、これはデギュスタシオン、テイスティングなどではなく、世界最高峰のフルコースだったのだなあ、と気づく仕掛けになっている。
手もとにおいて、節目ごとに読み返したい一冊。